「不動産業界に興味はあるけれど、営業がきついイメージしかない」
「求人票の職種名を見ても、何をする仕事なのか想像がつかない」
不動産の求人を眺めていると、こんなところで手が止まります。売買仲介、賃貸仲介、デベロッパー、賃貸管理。どれも不動産の仕事には違いありませんが、扱う相手も、稼ぎ方も、必要な力も別物です。
不動産業界の仕事は、大きく「開発」「流通」「管理」「賃貸」の4分野に分かれます。ここを整理しないまま会社を選ぶと、入社後に「思っていた仕事と違う」となりかねません。
この記事では、4分野25職種の中身を、現場で何が起きているかまで踏み込んで解説します。年収や市場規模は、国土交通省・総務省・国税庁の統計や各社の有価証券報告書を参照しました。
読み終えるころには、自分がどの分野に向いているか、次に何を調べればいいかまで見えてきます。興味のある分野から読み進めてください。
(この記事は約20分で読めます)
不動産業界の仕事は「開発・流通・管理・賃貸」の4分野に分かれる
不動産の仕事は、一つの物件が生まれてから使われ続けるまでの流れに沿って分類すると、頭に入りやすくなります。
- 開発業:土地を仕入れて、建物を企画・開発する
- 流通業:不動産を売る・買う・貸すの間に立ってつなぐ
- 管理業:オーナーに代わって建物と入居者を運営する
- 賃貸業:自分で不動産を持ち、貸して収益を得る
前の3つは「会社員として関わる仕事」、最後の1つは「投資家・事業主として関わる仕事」です。同じ不動産業界という言葉でくくられていても、立ち位置がまったく違います。
①4分野25職種の全体像
この記事で扱う職種を先に並べます。気になるものから読み進めてください。
開発業(4職種)
総合デベロッパー/専門デベロッパー/土地活用提案・投資用一棟アパート/土地活用提案・商業用店舗
流通業(13職種)
売買仲介(実需)/売買仲介(投資)/売買仲介(法人)/建売の販売/売建の販売/新築マンション販売(実需)/新築マンション販売(投資用)/買取再販の仕入れ(区分・戸建て)/同(土地)/同(一棟・ビル)/賃貸仲介(住居)/同(店舗・テナント)/同(ビル・オフィス)
管理業(4職種)
PM(プロパティマネジメント)/AM(アセットマネジメント)/マンション管理/ビル・テナント管理
賃貸業(4職種)
一棟アパートの大家/区分マンションの大家/古家の大家/底地の地主
②4分野は一つの物件の一生をリレーしている
一棟のアパートを例にすると、つながりが見えてきます。
デベロッパーが地主に企画を持ち込んで建物が完成し(開発業)、仲介会社が間に入って投資家へ引き渡す(流通業)。買った投資家は大家となり(賃貸業)、入居者募集と日々の運営は管理会社が引き受ける(管理業)。10年後に売却するときは、また仲介会社が入ります。
一つの物件をリレーのように受け渡していくため、隣の分野の事情がわかる人ほど重宝されます。分野をまたいだ転職が多いのも、この構造が理由です。
③業界の全体像を数字でつかむ
就職先を選ぶ前に、業界そのものの現在地を押さえておきます。
会社の数
宅地建物取引業者数は13万2,291業者(2025年3月末時点)で、11年連続の増加。内訳は大臣免許が3,158業者、知事免許が12万9,133業者です。事務所を2つ以上の都道府県に置く会社は全体の2.4%にとどまり、大半が一つの都道府県内で営業しています。
出典:国土交通省「令和6年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果」(2025年10月2日公表)
新築は減り、ストックは積み上がっている
2025年の新設住宅着工戸数は74万667戸で、前年比6.5%減。年間74万戸台は1963年以来、62年ぶりの低水準です。一方、全国の空き家は900万戸、空き家率13.8%といずれも過去最高を更新しました。
出典:国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年計)」/総務省「令和5年住宅・土地統計調査」
新しく建てる仕事は縮小し、すでにあるものを回す仕事へ重心が移りつつあります。管理業と買取再販の求人が増えている背景です。
給与水準
「不動産業,物品賃貸業」の平均給与は495万5,000円(2024年分)。前年比5.7%増で、14の業種区分のうち7番目に位置します。
出典:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」(2025年9月公表)
最上位の会社になると水準が変わります。三井不動産の平均年間給与は1,855万円、三菱地所は1,759万円(いずれも2026年3月期・有価証券報告書、提出会社単体)。業界平均との差は3倍を超えます。
ただし、有価証券報告書の数値は会社ごとの給与体系に左右されます。歩合の比重が大きい会社は平均値が低く出るため、この数字だけで待遇を比べることはできません。
「不動産は稼げる」と「不動産は稼げない」が両方語られるのは、どちらも事実だからです。どの分野の、どの会社に入るかで結果が変わります。
【開発業】土地を仕入れて建物を企画する仕事
デベロッパー(Developer)は「開発者」を意味し、不動産の企画と開発を担います。土地の取得、マーケティング、商品企画、販売までを引き受けるのが役割です。
ゼネコン(総合建設会社)と混同されがちですが、立場が異なります。何を建てるか決めて事業リスクを負うのがデベロッパー、決まったものを請け負って建てるのがゼネコンです。
仕事は土地の取得から始まります。登記簿で所有者を調べ、地主や周辺の地権者と交渉し、法規制を確認しながら事業計画を組む。この用地仕入れは、若手が任される場面が多い業務です。
街の風景そのものを変える規模の仕事に関われる点が、この分野の醍醐味です。最上位の数社では平均年間給与が1,700万円を超えており、志望者を集める理由になっています。
①総合デベロッパー|街単位で企画する
総合デベロッパーは、複数の用途を組み合わせた複合施設を手がける会社です。
商業施設、オフィスビル、ホテル、物流施設、住宅。これらを単体で企画するのではなく、街づくりの一環として組み合わせます。オフィスの就業者が使う飲食店、来街者が泊まるホテル、そこに住む人のための住宅を、一つのエリアに設計する仕事です。
案件は10年単位で動きます。地権者が数十人いる再開発では、合意形成だけで5年以上かかることも珍しくありません。若手のうちは用地取得や事業推進の補佐、テナント誘致(リーシング)、グループ会社への出向などを経験しながら、事業全体を見る力を育てます。
代表格は、三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産ホールディングス、野村不動産ホールディングスの5社です。業界では5大デベロッパーと呼ばれています。
採用は新卒が中心です。中途採用の枠は限られ、建築・金融・法務といった専門領域からの登用が多くみられます。
②専門デベロッパー|用途を絞って深く攻める
特定の用途に絞って企画・開発する会社です。マンションデベロッパー、オフィスデベロッパー、物流施設デベロッパー、ホテルデベロッパーなどが該当します。
現在、マンションデベロッパーは厳しい環境に置かれています。2025年の首都圏新築分譲マンションの発売戸数は2万1,962戸で、1973年以降の最少を更新しました。平均価格は9,182万円、東京23区は1億3,613万円といずれも最高値です。
出典:不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025年のまとめ」(2026年1月公表)
用地の取得競争と建築費の高騰で、供給を絞らざるを得ない。売れる価格帯に収めるため、定期借地権付きマンション(2025年は1,502戸で過去最多)のような手法も広がっています。
用地を仕入れられるかどうかが事業の生命線になるため、仕入れ担当の存在感が増しています。
マンションの分野では、野村不動産の「プラウド」、東急不動産の「ブランズ」、住友不動産の「シティタワー」のように、各社がブランドを立てて商品を差別化しています。志望先を選ぶときは、扱う用途とブランドの立ち位置を見ておくと、入社後の仕事が想像しやすくなります。
③土地活用提案(投資用一棟アパート)|地主の相続対策から入る
使っていない農地や空き地を持つ地主に、「アパートを建てませんか」と提案する営業です。大東建託、東建コーポレーション、生和コーポレーションなどが手がけています。
提案の入口になるのが相続税です。更地のまま相続すると、土地は自用地として満額で評価されます。そこにアパートを建てて人に貸すと、その土地は「貸家建付地」となり、評価額が下がります。
貸家建付地の評価額=自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合
出典:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」
借家権割合は全国一律30%。借地権割合が60%の地域で満室なら、土地の評価は18%下がる計算です。建物についても、まず固定資産税評価額(建築費より低くなるのが一般的)で評価され、人に貸していれば借家権割合の分がさらに差し引かれます。
ただし、提案する側が押さえておくべき前提があります。評価が下がるのは「貸せている」場合に限られるという点です。空室が出れば賃貸割合が下がり、減額幅も縮みます。相続税だけを見て建てた結果、返済が家賃収入を上回るケースは実際に起きています。
税の話を扱う以上、税理士との連携が欠かせません。踏み込んだ試算を単独で出せば、税理士法に抵触するおそれもあります。
④土地活用提案(商業用店舗・施設)|テナントを先に押さえる
同じ土地活用でも、商業用は進め方が変わります。
ドラッグストア、コンビニ、飲食チェーン、フィットネスといった出店希望のテナントを先に見つけ、その出店基準に合う土地を探す。地主には「この企業が20年借ります」と提案します。建物を地主に建ててもらい、テナントに一括で貸す形式(建て貸し、BTS=ビルド・トゥ・スーツ)が代表的です。
契約は事業用定期借地権が多く、10年以上50年未満の期間を設定します。期間満了で土地が更地で返ってくるため、地主にとっては出口が読みやすい選択肢です。
必要になるのは、各チェーンの出店基準を頭に入れておく力です。前面道路の交通量、商圏人口、間口の広さ、駐車場の台数。企業ごとに条件が細かく決まっており、その基準に土地を当てはめられる人が結果を出します。テナントとの関係をどれだけ持っているかが、そのまま提案力になる仕事です。
⑤開発業に向いている人|数年単位で走れるか
- 数年単位で一つの案件を追い続けられる人
- 地権者・行政・設計・施工と、立場の違う相手をまとめられる人
- 事業収支を数字で組み立てられる人
反対に、短いサイクルで成果を確認したい人には、開発業のスピード感は物足りなく感じられます。
【流通業】不動産を売り買い・貸し借りでつなぐ仕事
不動産業と聞いて思い浮かべる人が多いのが、この分野です。営業・販売が仕事の中心になります。
中古不動産を扱う売買仲介、新築戸建て・マンションの販売、買い取った不動産をリフォームして売る買取再販、賃貸物件を紹介する賃貸仲介。宅建業者13万2,291業者の大半が、ここに属します。
未経験からの入り口が広く、若いうちから収入を伸ばしたい人が集まる分野です。実力主義の会社が多く、歩合給を採用している会社も少なくありません。成約が給与に反映されるため、20代で年収1,000万円に届く人もいます。
ただし、そこは上澄みです。業界全体の平均給与は495万5,000円(国税庁、2024年分)。歩合制は成果が出た月に跳ね上がる一方、出ない月は基本給だけになります。振れ幅の大きさを受け入れられるかどうかが、この分野を選ぶ判断軸です。
①売買仲介営業(実需)|個人の住まいを仲介する
個人のお客様が自分で住む家を買う・売るときに間に立つ仕事です。土地、戸建て、中古マンションを扱います。
動きはこうです。ポータルサイトや自社サイトからの反響に対応し、物件を案内する。住宅ローンの事前審査を金融機関に通し、買付を入れ、売主と条件を調整する。契約を結び、決済・引き渡しまで見届ける。1件あたり1〜3か月かかります。
お客様の予定に合わせるため、土日が稼働の中心です。水曜が定休の会社が多いのは、この商習慣の名残です。
報酬は仲介手数料で、売買価格400万円超の場合は「価格×3%+6万円」(+消費税)が上限です。3,000万円の物件なら96万円。売主と買主の双方から受け取る両手取引になれば、その倍が会社に入ります。
人生で最も高い買い物に立ち会うため、感謝が直接返ってくる仕事です。同時に、引き渡し後に発覚した不具合の対応や、契約直前のキャンセルも起こります。喜びと緊張が隣り合わせにあります。
②売買仲介営業(投資)|投資家に収益物件を仲介する
同じ個人向けでも、相手が投資家になると会話が変わります。貸家、区分マンション、一棟アパートが主な商材です。
内見時間より先に聞かれるのは、利回り、レントロール(賃借状況の一覧)、修繕履歴、金融機関の融資条件です。「日当たりがいい」といった話は、判断材料になりません。
営業に求められるのは、金融機関とのパイプです。どの銀行が、どんな属性の人に、何年・何%で融資を出すか。この情報を持っている担当者に、投資家は繰り返し相談します。
日銀は2026年6月、政策金利を0.75%から1.0%へ引き上げました。1995年以来、約31年ぶりの水準です。調達コストが上がる局面では、これまで通る前提で組んでいた案件が通らなくなります。融資環境の変化を追い続ける必要がある仕事です。
出典:日本銀行「金融政策決定会合の結果」(2026年6月16日)
③売買仲介営業(法人)|企業の不動産戦略に関わる
法人が相手になる売買仲介です。ホールセールと呼ばれ、事業用地、社宅、遊休不動産の整理といった案件を扱います。
企業が保有不動産を見直す動き(CRE戦略)を背景に、1件で数億円から数十億円規模の取引が動きます。相手は経営企画部や総務部で、決裁は稟議と取締役会。決算期に合わせて売却時期が決まるため、個人相手のような即決はありません。
必要になるのは、デューデリジェンス(物件の詳細調査)を読み解く力と、契約条件を1条ずつ詰める交渉力です。信託受益権の形で売買される案件もあり、その場合は第二種金融商品取引業の登録を持つ会社しか扱えません。
新卒からいきなり配属される部署ではなく、個人向けの仲介で実績を積んでから移るケースが一般的です。
④新築戸建ての販売|建売と売建は別物
新築戸建ての販売には2つの型があります。混同されやすい部分なので、区別して押さえてください。
建売
土地と完成済み(または建築中)の建物をセットで売る形式です。分譲地では10棟、20棟とまとめて販売するため、1棟ごとの動きより「区画全体をどう売り切るか」を考えます。
完成在庫が長引くと金利と管理コストが積み上がるため、価格改定のタイミングを見極める判断が問われます。2025年の分譲一戸建ての着工は11万5,935戸で、3年連続の減少。供給が絞られる中、立地の良い区画に問い合わせが集中する状況です。
出典:国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年計)」
売建(建築条件付き土地)
先に土地を契約し、一定期間内(通常3か月以内)に決まった建築会社と請負契約を結ぶ条件を付けた販売形式です。間取りや仕様を打ち合わせながら決めていきます。
「注文住宅」と呼ばれることがありますが、建築会社を自由に選べる本来の注文住宅とは別物です。営業としては、土地の契約後にプラン打ち合わせが続くため、引き渡しまでお客様と長く関わります。
⑤新築マンションの販売|モデルルームで期分けに売る
モデルルームでお客様を迎え、資金計画から契約までを担当します。
新築マンションは期分け販売が基本です。第1期で反響の強い住戸から売り出し、売れ行きを見ながら次の期の価格を調整する。一つの現場に半年から2年関わり、竣工とともに次の現場へ移ります。
デベロッパー自身が売る場合と、販売会社が受託する代理業の場合があります。三井不動産リアルティ、東急リバブル、住友不動産販売といった会社が、代理業の担い手です。
実需向けマンション
自分で住むために買う人が相手です。価格上昇が続き、2025年の首都圏平均は9,182万円、東京23区は1億3,613万円(不動産経済研究所)。世帯年収の高い共働き世帯や、資産の組み替えを考える層が主要な購入者になっています。
投資用マンション
賃貸に出して家賃収入を得る目的で買う人が相手です。新築ワンルームが中心で、テレアポや紹介から商談につなげます。2025年上期の首都圏投資用マンションの平均価格は3,434万円、平均専有面積は25.74㎡でした。
出典:不動産経済研究所「首都圏投資用マンション市場動向 2025年上期」
この領域は、強引な勧誘をめぐる相談が消費生活センターに寄せられてきた経緯があります。長く働くつもりなら、会社の販売姿勢を面接で確かめておいてください。
⑥買取再販の仕入れ営業|会社の資金で物件を買う
買取再販は、中古物件を買い取り、リフォーム・リノベーションを施して再販する事業です。
市場は伸びています。2024年の中古住宅買取再販市場は成約戸数ベースで5万2,800戸(前年比13.3%増)、2025年は6万2,700戸に達する見込みです。
出典:矢野経済研究所「中古住宅買取再販市場に関する調査」(2025年11月公表)
新築価格の高騰で、相対的に割安な中古住宅へ需要が流れている構図です。仕入れ営業は、次の3つに分かれます。
区分マンション・戸建ての仕入れ
レインズ(指定流通機構)や業者間の情報網から売却案件を拾い、買取価格を提示します。判断材料は、リフォーム原価と再販価格の差です。想定より工事費がかさめば利益が消えるため、現地で劣化状況を読む目が要ります。
土地仕入れ
古家付きの土地を買い、更地にして分譲します。一つの土地を2区画に割れるか、接道は取れるか、開発許可は要るか。法規制を読み解く力がそのまま利益に直結します。再建築不可の土地を、隣地取得や但し書き申請で再生させる案件もあります。
一棟物・ビルの仕入れ
空室の多いビルやアパートを買い、賃料を見直して収益を改善させてから売却します。用途変更を伴うコンバージョンを手がける会社もあります。出口はファンドや投資家で、金額規模が大きくなります。
いずれも会社の資金を使って買う仕事です。仲介と違い、売れなければ在庫として残ります。判断の重さが仲介とは別物である点は、事前に理解しておいてください。
⑦賃貸仲介営業|未経験からの入り口が広い
賃貸物件を探す人と、貸したいオーナーをつなぐ仕事です。宅建業者の多くが賃貸仲介を手がけており、未経験可の求人も通年で出ています。
1〜3月の繁忙期は、来店対応、内見案内、申込、審査、契約が同時並行で走ります。1日に何組も接客し、その場で条件を詰めて決めていくスピード感が特徴です。
報酬は仲介手数料とAD(広告料)で構成されます。仲介手数料は、貸主・借主の双方から受け取る合計が家賃1か月分+消費税以内と決まっており、借主から1か月分を受け取るには事前の承諾が必要です。
会社によって、得意分野が分かれます。
賃貸マンション・貸家
一般の住居を扱います。件数をこなす商売で、繁忙期と閑散期の落差が大きい分野です。
店舗・テナント
飲食店や物販店の出店を支援します。業種によって必要な設備が変わり、居抜き(前の店の造作を残す)か、スケルトン(内装を取り払う)かで話が変わります。保証金は住居より重く、家賃の6〜12か月分を求められる例が多くみられます。開業の相談相手になるため、事業計画にも踏み込みます。
ビル・オフィス
企業の移転を扱います。坪単価、共益費、フリーレント(一定期間の賃料免除)、原状回復の範囲が交渉のポイントです。移転は経営判断のため、検討期間が半年から1年に及びます。
⑧流通業に向いている人|数字と向き合えるか
- 数字で評価される環境を歓迎できる人
- 初対面の相手と短時間で関係を作れる人
- 断られた翌日に、また動き出せる人
土日出勤が前提の職種が多い点も、選ぶ前に押さえておくところです。
【管理業】オーナーに代わって不動産を運営する仕事
「営業で数字を追いたくはないが、不動産に関わりたい」。この希望に合うのが管理業です。
物件を所有するオーナーに代わって、不動産の管理・運営を担います。新築が減り、空き家が増え続けている現在、すでにある建物をどう維持するかの重みが増しています。
管理業は大きく2つに分かれます。
賃貸管理会社
賃貸物件のオーナーに代わって、物件の管理・運営を行います。
- 入居者募集や契約管理
- 家賃・共益費の徴収
- 修繕やメンテナンスの手配
- 入居者とのトラブル対応
オーナーの代理人として契約関係を管理し、建物の状態を保つことで、オーナーと入居者の双方が納得できる住環境を維持します。
建物管理会社
マンションやビルの共用部分・共用設備の管理・運営を行います。
- 清掃・保安業務の管理
- エレベーターや給排水設備の保守点検
- 共用施設の予約管理
- 修繕工事の計画立案
管理組合やオーナーから委託された業務を確実に遂行し、入居者の安全と共用スペースの快適さを守るのが役割です。
なお、賃貸管理には現場を回すPMと、投資判断を担うAMがあります。同じ「管理」でも立ち位置が異なるため、分けて解説します。
①賃貸管理:PM(プロパティマネジメント)|現場を回す
現場に近い立場で、建物と入居者を回す仕事です。
日々の内容は、入居者からの問い合わせ対応、更新手続き、退去立会い、原状回復工事の手配、家賃滞納の督促、オーナーへの月次報告。「エアコンが動かない」「上の階がうるさい」といった連絡に、その日のうちに応じます。
2021年6月に全面施行された賃貸住宅管理業法により、管理戸数200戸以上(自己所有物件を除く)の事業者には国土交通大臣への登録が義務づけられました。営業所ごとに業務管理者を1名以上配置する必要もあります。業務管理者になるには、賃貸不動産経営管理士か宅地建物取引士の資格と、2年以上の実務経験が必要です(宅建士の場合は指定講習の修了も求められます)。
出典:国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」
規模の大きい会社を知っておくと、業界地図がつかめます。管理戸数の上位は、大東建託グループ129万4,332戸、積水ハウスグループ72万1,293戸、大和リビング67万5,875戸(2025年3月末時点、回答1,069社中)。
出典:全国賃貸住宅新聞「2025年管理戸数ランキング」(2025年8月)
上位を建築会社系列が占めているのは、賃貸住宅を建てて管理まで一体で引き受けるモデルだからです。
②賃貸管理:AM(アセットマネジメント)|投資家の側に立つ
同じ賃貸物件を扱っても、AMは投資家の側に立ちます。
J-REITや私募ファンド、海外投資家などから資金を預かり、どの物件を、いくらで買い、どう運用し、いつ売るかを判断する仕事です。PMに現場業務を委託する立場にあたり、日々の入居者対応を直接担うことは原則ありません。
見る数字は、NOI(純収益)、キャップレート(還元利回り)、IRR(内部収益率)。投資家への報告資料を作り、運用方針を説明する場面も多く、不動産と金融の両方の言語を扱います。
新卒採用は限られ、信託銀行、証券会社、大手デベロッパー、監査法人などからの中途採用が中心です。年収水準は業界内でも高い部類に入りますが、求められる専門性も相応に高くなります。不動産証券化協会認定マスター(ARES)や不動産鑑定士を持つ人が集まる領域です。
③建物管理:マンション管理|管理組合と伴走する
分譲マンションの管理組合から委託を受け、建物の維持管理を担います。担当者はフロントと呼ばれます。
月次の理事会に出席し、年1回の総会を運営する。長期修繕計画を見直し、12〜15年周期の大規模修繕を進め、管理費・修繕積立金の滞納に対応する。相手は住民の代表である理事会で、意見が割れる場面をまとめる役目も担います。
マンション管理業を営むには、国土交通大臣の登録が必要です。加えて、管理事務の委託を受けた管理組合30組合につき1名以上の専任の管理業務主任者を配置しなければなりません(マンション管理適正化法第56条)。管理委託契約前の重要事項説明も、管理業務主任者が行います。
数字のノルマは営業職ほど強くない一方、複数の管理組合を同時に担当するため、段取りの力が問われます。
④建物管理:ビル・テナント管理|企業の入居を支える
オフィスビルや商業施設を扱います。
空室が出ればテナント誘致(リーシング)を進め、契約更新時には賃料改定を交渉する。設備の保守点検を管理し、消防訓練やBCP(事業継続計画)にも関わります。
住居と違い、テナントの事業内容によって求められる設備が変わります。電気容量、給排水、排煙、床荷重。入居時の内装工事と、退去時の原状回復の範囲を巡って協議になる場面も多く、契約書を精読する習慣が身につく仕事です。
⑤管理業に向いている人|長い付き合いを楽しめるか
- 突発的な連絡にも落ち着いて対応できる人
- 決まった手順を確実に回せる人
- 短期の成約より、長い付き合いに価値を感じる人
24時間対応の当番がある会社も多いため、勤務体制は面接で確認しておいてください。
【賃貸業】自分で不動産を持って貸す仕事
ここからは、会社員として働く話ではなく、不動産投資家として活動する立場の解説になります。
大家・地主を相手にする営業職(開発・流通のうち投資系)を志望する人にとっても、相手の立場を知る材料になります。
賃貸業とは、不動産を貸し出して賃料を得る生業です。資本力、もしくは金融機関から融資を引ける信用力があれば始められます。
注意したいのは、不動産を取得すれば不労収入が安定して入るわけではない点です。賃貸業も一つの事業であり、学習しないまま始めれば行き詰まります。
不動産は資産性が高い分、その資産性を保つための費用も大きくなります。修繕積立を用意せずに利益を使い込むと、大規模修繕のタイミングで資金が尽きます。一定のリスクを伴う「生業」である点を忘れないでください。
政策金利が1.0%まで上がった現在(2026年6月時点)、変動金利で借りていれば返済額への反映が時期をずらして訪れます。購入時の収支計算には、金利上昇分の余裕を織り込む必要があります。
※本項は情報提供を目的としたものです。投資判断は自己責任でお願いします。個別の税務・融資については、税理士や金融機関にご相談ください。
①大家(居宅のオーナー)|3つの持ち方から選ぶ
貸し出す不動産には3つの種類があり、資金力や得意分野によって選ぶ対象が変わります。
一棟アパート
土地と建物をまとめて所有します。空室が出ても他の部屋の家賃で補えるため、収入が途切れにくい形です。屋根・外壁・給排水といった建物全体の修繕を自分で負担するため、まとまった資金と融資枠が要ります。土地を持てる分、担保価値を次の物件購入に生かせる点も特徴です。
区分マンション
マンションの一室を所有します。少額から始められ、複数の物件に分散しやすい形です。共用部の管理は管理組合を通じて行われるため、個人で抱える手間は軽くなります。ただし、その部屋が空けば収入はゼロです。管理費と修繕積立金が毎月出ていくため、家賃から差し引いた手残りで判断する必要があります。
古家
築年数の経った戸建てを安く買い、修繕して貸します。物件価格が低いため、現金でも始めやすい形です。融資が付きにくく、修繕費が読みづらい点が難所になります。全国の空き家900万戸という背景から、供給そのものは増え続けています。
②地主(底地のオーナー)|土地だけを貸す
底地とは、借地権が設定された土地のことです。地主は土地を貸し、借地人がその上に建物を建てて所有します。
収入は地代、更新料、建て替え時の承諾料などです。建物の修繕義務がないため、手間は軽くなります。
一方で、扱いの難しさもあります。借地借家法は借地人の権利を強く保護しており、地主の都合で契約を終わらせるのは容易ではありません。地代が周辺相場より低いまま据え置かれている例も多く、収益性が高いとは限りません。売却しようにも買い手が限られ、底地専門の買取業者に相談する流れが一般的です。
先祖から受け継いだ底地の扱いに悩む人は多く、この相談に応じられる営業は重宝されます。
③賃貸業を始める前に確認したい3点
- 修繕費と空室を織り込んだ収支になっているか
- 金利が1〜2%上昇しても返済を続けられるか
- 出口(売却)まで想定できているか
満室想定の利回りだけで判断すると、想定が崩れたときに立て直せません。
4分野から自分に合う仕事を選ぶ3つの視点
25職種を並べても、自分に合うものはすぐには決まりません。次の3つで絞り込んでみてください。
①収入の作り方|歩合型か固定型か
売買仲介、新築販売、買取再販の仕入れは歩合の比重が大きく、成果が収入に直結します。20代で1,000万円を目指せる分野です。
管理業(PM、マンション管理)や総合デベロッパーは固定給の比重が大きく、月ごとの振れ幅は小さくなります。腰を据えて長く働きたい人に向いています。
どちらが優れているかではなく、収入が上下する状態を許容できるかどうかが判断の軸です。
②相手|個人か、法人か、オーナーか
個人(実需)を相手にするなら、売買仲介、新築マンション販売、賃貸仲介。人生の節目に立ち会う仕事です。
法人を相手にするなら、ホールセール、ビル・テナント管理、AM。論理と数字で進む仕事になります。
オーナー(地主・投資家)を相手にするなら、土地活用提案、投資用の売買仲介、PM。長期の関係を築く仕事です。
③時間軸|取引で稼ぐか、運用で稼ぐか
流通業は、1件の取引を成立させて報酬を得るモデル。成果が短いサイクルで見えます。
管理業と賃貸業は、預かった資産を回し続けて報酬を得るモデル。1件あたりの単価は小さく、積み上げで成り立ちます。
開発業は、その中間です。数年かけて一つの事業を立ち上げ、完成時に大きな成果が返ってきます。
未経験から不動産業界に入るときの進め方
「興味は持てた。次に何をすればいいのか」に答えます。
①求人票と会社情報で確認する4項目
1. 免許番号のカッコ内の数字
「東京都知事(3)第○○○○○号」のカッコ内は、免許を受けた回数です。宅建業免許の有効期間は5年のため、(3)なら10年以上、(5)なら20年以上の営業実績があるとわかります。(1)は開業5年未満です。
2. 給与の内訳
「月給25万円〜100万円」と幅がある場合、下限が固定給、上限が歩合を含んだ金額です。みなし残業が何時間分含まれているか、歩合はいつ支払われるか(成約時か、決済後か)まで確認してください。
3. 事業ドメイン
仲介だけの会社か、管理も持っている会社か。管理物件を持つ会社は、ストック収入がある分、経営が安定しやすい傾向にあります。
4. 定着率
新卒で入社した人の3年以内離職率は、全産業の大学卒平均で33.8%(2022年3月卒業者)。事業所の規模が小さいほど高くなる傾向があります。応募先の実績は求人票に載らないことも多いため、平均勤続年数や新卒3年後の在籍状況を面接で確認してください。
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
②宅建は「入社前」か「入社後」か
宅地建物取引士(宅建士)は、この業界で使いどころの多い資格です。宅建業者は、事務所の従業者5人につき1人以上の専任の宅建士を置く義務があり、重要事項説明は宅建士しか行えません。
2025年度(令和7年度)の試験は、受験者のうち4万5,821人が合格し、合格率は18.7%でした。
出典:不動産適正取引推進機構「令和7年度宅地建物取引士資格試験実施結果の概要」(2025年11月26日公表)
未経験の場合、入社後に取得する前提の会社が多く、資格手当を支給する会社も一般的です。転職活動と並行して勉強を始めておけば、面接で意欲を示す材料になります。
分野別に効く資格を挙げると、マンション管理なら管理業務主任者・マンション管理士、賃貸管理なら賃貸不動産経営管理士、AMなら不動産証券化協会認定マスターです。
③最初の3年で何を積むか
1年目は、物件を見る量を確保します。図面と現地の差を体で覚える時期です。
2年目は、契約書と重要事項説明書を読み込みます。契約不適合責任、特約、解除条件をどう書くかで、後のトラブルが変わります。
3年目は、隣の分野を覗きます。仲介にいるなら管理の現場を、管理にいるなら仕入れの判断基準を知る。分野をまたいだ知識が、そのまま次のキャリアの選択肢になります。
不動産業界の仕事に関するQ&A
Q. 未経験でも入れますか
賃貸仲介と売買仲介は、未経験からの採用が多い分野です。宅建業者は13万2,291業者あり、通年で採用している会社も珍しくありません。デベロッパーやAMは、新卒採用や経験者採用が中心になります。
Q. 年収が高いのはどの分野ですか
平均で見ると、最上位の総合デベロッパーが高い水準です(三井不動産1,855万円、三菱地所1,759万円/2026年3月期・有価証券報告書)。個人の実績で伸ばすなら、歩合比率の高い売買仲介や投資用販売に上振れの余地があります。業界全体の平均は495万5,000円(国税庁、2024年分)です。
Q. 資格は入社前に取るべきですか
必須ではありません。ただし、宅建士を持っていると配属や手当で有利に働きます。2025年度の合格率は18.7%でした。
Q. ノルマはどの職種にもありますか
営業職には目標数字があります。管理業(PM、マンション管理、ビル管理)は、契約更新率や解約率で評価する会社が多く、新規獲得の数字を個人で背負う場面は限られます。
Q. 土日は必ず出勤ですか
個人向けの仲介・販売は、土日が稼働の中心です。法人向けのホールセール、ビル管理、AMは、平日中心の勤務になります。働き方で選ぶなら、扱う相手で判断してください。
まとめ:不動産業界の仕事は4分野25職種
この記事の要点を整理します。
- 不動産業界の仕事は開発(4職種)・流通(13職種)・管理(4職種)・賃貸(4職種)に分かれる
- 新築着工は62年ぶりの低水準、空き家は900万戸。ストックを回す仕事の比重が増している
- 収入の作り方は分野で異なり、歩合型か固定型かが最初の分かれ道になる
- 未経験の入り口は賃貸仲介・売買仲介が広く、宅建士(2025年度の合格率18.7%)が汎用性の高い資格
「不動産業界は稼げる」も「不動産業界はきつい」も、どちらも一面では正しい話です。25職種のどれを指しているかで、答えが変わります。
とはいえ、職種名を眺めているだけでは、自分に合うかどうかは判断できません。気になる分野が見つかったら、その分野の求人を3社ほど並べて、給与の内訳と事業内容を比べてみてください。同じ「不動産営業」でも、書かれている中身が会社ごとに違うとわかります。
情報を集めないまま応募すると、入社後に「話が違う」となり、早期の離職につながりかねません。分野の違いを理解したうえで選べば、経験が次のキャリアに積み上がっていきます。
まずは、自分が向き合いたい相手(個人・法人・オーナー)を一つ決めるところから始めてみてください。そこが決まれば、見るべき求人は25職種から3〜4職種まで絞り込めます。
参考データ・出典一覧(2026年9月時点)
| 項目 | 出典 | 公表時期 |
|---|---|---|
| 宅地建物取引業者数13万2,291業者 | 国土交通省「令和6年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果」 | 2025年10月 |
| 新設住宅着工戸数74万667戸/分譲一戸建て11万5,935戸 | 国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年計)」 | 2026年1月 |
| 空き家900万戸・空き家率13.8% | 総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計」 | 2024年4月 |
| 平均給与495万5,000円 | 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」 | 2025年9月 |
| 首都圏新築マンション2万1,962戸・9,182万円 | 不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025年のまとめ」 | 2026年1月 |
| 首都圏投資用マンション3,434万円 | 不動産経済研究所「首都圏投資用マンション市場動向 2025年上期」 | 2025年8月 |
| 買取再販5万2,800戸(2024年) | 矢野経済研究所「中古住宅買取再販市場に関する調査」 | 2025年11月 |
| 管理戸数ランキング | 全国賃貸住宅新聞「2025年管理戸数ランキング」 | 2025年8月 |
| 貸家建付地の評価 | 国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」 | ― |
| 賃貸住宅管理業の登録義務(200戸以上) | 国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」 | ― |
| 管理業務主任者の設置義務(30組合に1名) | マンション管理適正化法第56条 | ― |
| 宅建試験 合格率18.7% | 不動産適正取引推進機構「令和7年度宅地建物取引士資格試験実施結果の概要」 | 2025年11月 |
| 3年以内離職率33.8% | 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」 | 2025年10月 |
| 政策金利1.0% | 日本銀行「金融政策決定会合の結果」 | 2026年6月 |
| 平均年間給与(三井不動産・三菱地所) | 各社有価証券報告書(2026年3月期・提出会社) | 2026年6月 |
免責事項
本記事は、不動産業界の職種理解を目的とした情報提供記事です。記載の統計・数値は上記時点のものであり、最新の情報は各出典元をご確認ください。税務・投資・融資に関する個別の判断については、税理士・金融機関などの専門家にご相談ください。
