「不動産屋に家を売ったら、損する?」
「そもそも、買取と仲介の違いがよくわからない…」
一般的な仲介ではなく、プロの不動産会社が不動産を買い取る不動産買取(業者買取)。
メリット・デメリットや注意すべき点は押さえておきたいですよね。
そこで、不動産業界に勤めて6年以上、賃貸から売買まで幅広く経験した筆者が、不動産買取を第三者目線でわかりやすく解説します。
この記事を読めば、不動産屋の話を鵜呑みにすることなく、買取にするか仲介にするか自分で判断できるようになります。
不動産売却で損したくない方は、ぜひ参考にしてください。
不動産買取と不動産仲介
不動産を売却するには、次の2つの方法があります。
それぞれ解説します。
不動産買取で売却する
不動産買取とは、物件を不動産会社に買い取ってもらうことをいいます。
ケースとしては、次の3つ。
- 直接、買取業者に物件を売却する
- 仲介業者を介して買取業者に売却する
- 仲介業者に物件を売却する
一括査定サイトなどに登録して、はじめは仲介業者と会う人が多いので、2 と3 のケースが多くなります。
プロの不動産業者に売ることで、不要なトラブルを避けることができ、何より金額さえ合えば即座に物件を売却できます。
不動産仲介で売却する
一般的には、不動産仲介業者を介して販売活動を行い物件を売却します。
方法としては、大手ポータルサイトなどへ物件情報を掲載し、良い条件で購入してくれる一般の買主を探します。売却までの期間は、3カ月から6カ月ほどを目安としておくと良いでしょう。
時間がかかっても、できるだけ高く売りたいという人は仲介がおすすめです。
不動産買取の注意点≪5選≫
不動産買取で不動産を売却する際の注意点を5つ紹介します。
前半3つは『不動産買取』特有のもの、④と⑤は不動産を売却する際に必ず注意すべきポイントです。
それぞれ解説します。
1社の査定結果のみを参考にしない
買取業者の査定結果が、まだ一つしかない場合は、他の買取業者にも査定してもらいましょう。
仲介業者が間に入っている場合は、複数社の査定結果を提示するように伝えてみてください。
買取業者にも得手不得手があるため、複数社に依頼することでよりも高い査定結果をもらいやすくなります。
得手不得手を決めている要因は様々ですが、主に次の2つです。
- 会社の資金力
- 再販売する際に行うリフォームの度合い
会社の資金力によって、買取れる物件の価格帯が変わります。
得意とする物件の価格帯に応じて、行うべきリフォームの度合いも変わるため、会社に蓄積されるノウハウも異なってきます。
例えば、次のような2社では得意分野がまったく異なります。
それぞれ解説します。
物件に付加価値をつけられる買取業者
配管部分から表層の壁紙・建具、水回りなど、すべてにこだわってリフォームする会社です。資金力がある大手の買取業者に多い印象です。
このような会社の場合、買取で得意な物件は価値の高い物件。
例えば、
・立地がいい(駅近、駅直結など)
etc…
・タワーマンションの上層階
・マンションの角部屋・駐車場権利付き
フル改装を行うことで、資産価値がさらに上がるため、買取業者は相場よりも高値で売却できます。
物件に何か良い特徴がある物件は、このような会社に見積もりを依頼する方が高値を付けてもらいやすいでしょう。
買い手が見つかりにくい物件を何とかできる買取業者
手を入れるところと残すところを判断して、部分的なリフォームを行い販売するのが得意な会社です。
ひとり親方で経営している工務店や、中堅の買取再販業者に多い印象です。得意な物件は条件が悪く売りづらい物件。
例をあげると、
・立地がわるい(駅徒歩10分以上、近くにバス停しかない)
etc…
・築40年以上
・マンションの低層階、エレベーターがない
・建ぺい率、容積率オーバーの戸建住宅
なかなか販売するのが難しそうな物件ばかりですね。
このような物件の場合、フル改装を行うような会社では、かけた費用分を再販価格に上乗せできないので、買取値を高くできません。
そのため、日ごろから価格の低い物件を取り扱っている会社の方が、適正な買取金額を提示してくれる可能性が高くなります。
仲介業者にとって買取案件はオイシイ
仲介業者が買取での売却を執拗に勧めてくる場合は、一度立ち止まって考えてみることが必要です。
なぜなら、買取業者と取引を成立させた場合、仲介会社は得をするから。次の図をご覧ください。
買取案件の方が仲介会社が儲かるワケ
買取業者への売却ができれば、仲介業者は次の3者から計4回、仲介手数料を受け取れます。
- 元の物件所有者(売るとき)
- 買取業者(買うとき・売るとき)
- 再販物件を購入した新所有者(買うとき)
仲介業者の担当が、自分の利益を追求したいがために提案しているのか、物件所有者のことを思って提案しているのかは、コミュニケーションの中で判断していくしかありません。
ポイントとしては「今はまだ余裕があるので高く売りたい」と主張しているにもかかわらず、執拗に買取の提案をしてくる場合は注意した方がいいでしょう。
ただ、不動産買取にもメリットはあるので、決して勧めてくること自体が悪いわけではありません。
不動産買取できない場合もある
物件の中には、リフォームしても売りづらいと判断されれば、買取をしてもらえない場合があります。
具体的には、
・接道条件を満たさない戸建住宅
・建ぺい率、容積率オーバーの戸建住宅
・旧耐震マンション
・管理状態に問題があるマンション
・立地が悪すぎる物件
etc…
非常に売りづらい物件です。
買取業者によって判断は様々ですが、上記の例にあてはまる物件は買取できないケースが多いです。
特に、旧耐震や再建築不可の物件は、近年、住宅ローンの審査基準が厳しくなってきているので、買取業者もなかなか手が出せません。
住宅ローンが通らないとなると…
次の購入者は現金を用意できる人だけになります。
築年が古い物件に住んでいて旧耐震に該当するかどうか心配な人は、建築確認通知書を確認してみましょう。
役所の建築指導課などに行けば発行してもらえます。詳しくは、管轄する役所に問い合わせてみてください。
通知書の発行日が、
- 1981年6月1日以降であれば、新耐震基準
- 1981年5月31日以前であれば、旧耐震基準
と判断できます。
抵当権の抹消は必須
物件を売却する際、物件に抵当権がついている場合は、抹消してからでないと売却できません。
もし、ローンの残債がある場合は、売却益で完済するか、それでも足りない場合は、自己資金を支払いにあてる必要があります。
住宅ローンの残債がある物件を売却するには、ローン残債額よりも高い価格で買取・購入をしてもらえるかどうかが重要です。
売却後は確定申告が必要
売却益が出た場合はもちろん、売却して損失が出た場合も必ず確定申告をするようにしましょう。
なぜなら、損失が出た場合、税金の軽減措置を受けられるからです。
このときの損失を『譲渡損失』といい、マイナス分を、売却した年の他の所得と相殺できます。具体的には、所得税と住民税を減らすことができます。
さらに、譲渡損失が大きく、その年の所得税では相殺しきれない場合は『繰越控除』を利用することで翌年も控除を受けられます。
これは『譲渡損失の繰越控除』と呼ばれ、売却した年を合わせれば、最大で4年間も所得税や住民税の軽減措置を受けられる制度です。
詳しくは、管轄する税務署に問い合わせてみましょう。
確定申告の提出は重要で、怠ると最悪の場合は税務署からペナルティを受けます。必ず行なうようにしてください。
不動産買取のメリット・デメリット
ここからは、不動産買取のメリット・デメリットを解説します。
不動産買取のメリット
不動産買取のメリットは、次の通りです。
それぞれ解説します。
①成約までが早い
不動産買取では、売却までの期間が短くて済みます。
なぜなら、買取業者は常に買取りできる物件を探しており、買えるものがあればすぐにでも買いたいと思っているからです。
私も買取業者を経験していますが、血眼になって、日々物件情報を集めていました(笑)
また、金額さえ納得できれば、買取業者が変わった条件をつけてくることもないので、スムーズに売却できます。
②契約不適合責任を負わなくていい
売却後、シロアリや雨漏りなど、物件に住むうえで重大な問題が発覚した場合には、売主は賠償責任を負わなければなりません(一定期間)。
これを『契約不適合責任』といいます。
しかし、この責任は一般の消費者に対して物件を売却した場合に限るので、売却先がプロの不動産業者である場合には免除されます。
売却してからの不安がなくなるのは嬉しいですね。
③内覧のために掃除をしなくていい
もし、あなたが売却予定の物件にまだ住んでいて、今後、売却を考えているのであれば、次のようなお悩みはありませんか?
「はやく掃除しないと…」
etc…
「内見希望者と予定を合わせるのがめんどくさいなぁ」
一般の消費者に対して物件を売却する際は、少しでも綺麗な状態で物件を見てもらう、内見の際は予定を合わせて立ち会うなどの配慮が必要になります。
しかし、買取業者に売却する場合は不要です。売るときにキレイな状態で見せる必要はありません。
また、内見日は仲介業者に頼めば、調整した日に買取業者を一斉に呼んでくれるので、予定をこまめに空ける必要もないでしょう。
④周りに物件情報を公開せずに売れる
買取業者に売却するのであれば、物件情報を公開せずに引渡しまで進められます。
始めから買取で進めるのであれば、ポータルサイトなどには一切、物件情報を出さずに仲介会社経由で買取業者を探してもらうことが可能です。
「物件を売却することを周りに知られたくない。」と思っている人にとって、嬉しいポイントですね。
一方、できるだけ高い金額で売りたい場合は不動産買取をお勧めできません。
近年、一般の方が物件を探す方法で最も多い手段が、ポータルサイトです。そこに掲載していない物件は、一般の方に周知できないので、売れるものも売れません…
成約まで長期化する可能性が高くなります。
不動産買取のデメリット
不動産買取のデメリットは、次の2つです。
それぞれ解説します。
①仲介で販売するより、売却価格が低くなる
不動産買取の最大のデメリットは、売却金額が低くなること。具体的には、一般の消費者に売却する場合と比べて、3~4割ダウンします。
買取業者はリフォームして再販するため、そのコストと利益が売却金額に反映されます。
また、買取業者が物件を買取りする場合、一般の方が購入する際には大きく減税される、登記免許税や不動産取得税などが減税されません。物件によりますが、それぞれ50~100万円前後かかるもの。コストとして決して小さいものではありません…
このような点を踏まえても、一般の人が購入するケースと違い、買取業者が物件を買うとどうしても相場よりも安くなってしまいます。
②売却後に誰がどう使うかわからない
不動産買取で売却した物件は、買取業者の手に渡りリフォームされ、新しい所有者のもとへ再び販売されます。
そのため、長年住んだ思い入れのある物件だとしても、どんな人の手にわたり、どう使われているのか、まったくわかりません。
不動産買取の方法は2つある
実は、『不動産買取』には方2つの方法があります。
すぐに売るか、期間を定めて売却するかの違いになりますが、特に後半で記載している『買取保証』は筆者がおすすめの売却方法です。
それぞれ解説します。
即時買取とは
即時買取とは、その名の通り、買取業者にすぐに買取りしてもらう方法です。
「新築の家を建てていて、引渡しまでに物件を売却しなければならない。」
etc…
「ワケあって急いでいる!」
このような悩みがあれば、即時買取で買取業者に買取ってもらうのがいいでしょう。
買取保証とは
買取保証とは、はじめは仲介業者で販売活動を行い、期日までに売れなかった場合に、あらかじめ設定しておいた金額で不動産会社が物件を買取る方法をいいます。
それでは、具体的な例をあげて説明します。
買取保証の例
オーナーは、Aマンションの一室を、ある仲介業者に売却依頼しました。そこで、仲介業者は査定をした上で、次のような提案をしました。
- 一般の消費者に売れる金額が3,000万円です。
- その物件の買取保証金額を、3,000万円の70%、2,100万円と設定いたします。
- これを、段階的に値下げしていき、3カ月後に売れなかった場合、2,100万円で弊社が買取りいたします。
つまり、査定額と買取保証額は次のように設定されます。
- 査定金額 :3,000万円
- 買取保証金額 :2,100万円
この条件で販売をスタートした結果、次のような流れで価格調整が行われます。
- はじめの1カ月間は、査定金額の115%で3,450万円で売り出す。
- 売れなければ、2カ月目、査定価格100%の3,000万円で販売。
- さらに売れなければ、3カ月目、買取保証金額の110%、2,310万円へ値下げ。
- 丸3か月経っても売れなかった場合、当初設定した買取保証金額、2,100万円で物件が買取られる。
買取保証は「具体的な期限が決まっていても、できるだけ高く売りたい」人からすれば都合のいい売却方法になります。
売却時にかかる諸経費に注意
売却時にかかる費用は、次の通りです。
売却時にかかる諸経費
物件を買ってから5年以内に売ると、譲渡所得税が高くなってしまいます。
物件によってかかる費用は異なるので、詳しくは、実際に取引を行う不動産業者にお尋ねください。
売却時に必要なものに注意
不動産を売却する際に必ず必要になる書類を次の4点です。
- 本人確認できる書類(身分証明書)
- 実印
- 印鑑証明書
- 住民票
個別で異なることがあるため、詳しくは、取引を行う不動産会社の担当に直接ご確認ください。
まとめ:急ぐなら不動産買取!期間が明確なら買取保証を検討してみよう
今回は、不動産買取の注意点や損しないための方法も合わせて紹介しました。
- 急いで売却を考えている場合は『不動産買取』
複数の買取業者に査定を依頼してみる! - まだ期間に余裕がある場合は、仲介で高く売るのがベスト
- 期間に定めがある場合は、買取保証がおすすめ
高値で売出し、売れなかったら最終的には保証金額で買取してもらえる
不動産の売却は、一生にそんなに多く経験するものではありません。読者の皆様が、少しでも気持ちの良い不動産取引ができることを切に願っています。この記事が、その一助となれば幸いです。